深呼吸する言葉・ジャイアント・ラブ
隕石の凄まじき衝撃。
地球から千切れて45億年。
それでも遠ざからぬ月に人を想う。
深呼吸する言葉・抜歯
歯が抜けた。
心に埋まっていた歯が天に吹き飛ばされた。
凝り固まる私を優しく砕く歯列の一本だった。
その微笑みは、この瞳を覗くたび深く頷いた。
老媼の温もりが欠けた隙間に疼痛の涙が襲う。
深呼吸する言葉・吹き出しに修正マーカー
食べたものを薬で排出する、
老朽した身体のメカニズム。
眼下で捉えるは汚泥の海ばかり。
溜息も揶揄したくなる言葉も白く塗りつぶし、
心が冷たくならぬよう着込むだけ。
深呼吸する言葉・地殻変動
70億人の文明を縫いつけられた地球は、
その重さに耐えかねて、外套を脱ごうとする。
深呼吸する言葉・桜はまだかいな
寒天にかじかむ蕾を見上げては、何度も春をノックしに行く。
深呼吸する言葉・プレートの継ぎ目
赤ちゃんの大泉門の上に原発を造ってしまった日本政府。
深呼吸する言葉・カチカチの言葉
あなたの口からねじり飴がえんえんと伸びて行く。
此の眼も耳もカチカチになって仕舞わぬうちに、
少しだけ春をまぶしてください。