2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧
地球は太陽を廻って、人は地球の上を廻る。 あたまはサーチライトのように現実を廻って、 こころは自分のなかをぐるぐる廻る。 そこにリアルな実感があるだけで、空はくっきり青いだろう。
車内を走り回る不快感のT・レックス。 化粧をする娘からは、美しさだって逃げて行く。
昔のこども、横隔膜がパニックになるまで泣かせて貰えたね。
急激にどかんと寒くなって、 あせる、一年ぶりの冬支度。 電車の車両はまるでタンスの中身そのもの。 詰め込まれた防虫剤の成分にヤラレテむせ返る。
しっかりと頭には黒い夏の帽子。 膨らんだボストンバッグを抱きしめ、 ベッドで眠り込む認知症のおばあちゃん。 もう帰れる家などないのに、 遠足を待ちわびる小学生のようでいじらしくて。
「違うよ」「違うって言ってんだろ」 途切れない十分間、携帯電話でやり込められてる中年男。 特急電車の走行音にまぎれて、がなり立てる声が漏電中。 乗客の嫌悪感がスパークして流れ込む先で、びくともしない女。
雲が湧いて、雲が雲に食べられ、雲が風に消される。 それは、瞼の残像をえんえんと書き換える大容量の変化。 その、獰猛な空の世界を一喝せんと現れた太陽の親分。 何処までも続く青い海原に、雲の波が鎮まり返る。
目の前に広がる光景を見ずして、遥か先で輝くモノに心奪われる人の習性かな。
背中で感じる親の愛。 胸を向けて想う恋人への愛。 腕に挟めて知る子供への愛。 両手ですくう残り少ない愛。 身体の何処をとっても繋がっている愛。
「今、死ねない」と強く思った時、 天命がリセットされるのかも知れない。 「ここまでの命」を塗り替えるオマケの余命は、 命の感受性が左右するのかも知れない。
太陽がつくる芸術を、上空から目撃する鳥たち。 地球がたたえる海を、どこまでも寄り添う魚たち。 私たちは、それを、心で抱きしめることしか出来ない。
真っ赤な唐辛子の中から粒々がこぼれて、辛さを主張し始めた。 でも、その味が生きるのは、ほかの畑の白菜や世界の食物があってこそ。
ある日、降ってきた言葉のパワーストーン。 「あなたにめぐり会えてよかった。」 その一粒の想いがすぐに消えたとしても、そっと寄り添う。 高齢者と私の間にある認知症という不思議なもの。
空と海に挟まれた釣り船屋つらつら輝く。 天然の風景のサンドイッチを私は食む。 沖から、緑の船がレタスになって走って来た。
そこの角を曲がったら生き止まりの高齢者だって、 時に、認知症の海に潜るタフな海女さんになれるんだよ。 死が溢れ始める年齢の河でも、 時に、記憶の故郷をさかのぼる瑞々しい鮭になれるんだよ。
「体操着が見つからないの、どこ?」 突然、85歳の高齢者が小学生になった。 瞳の奥で、灯台が遠くに沈む記憶の海を照らしている。 目を閉じれば、明かりは消え、現実をかたどる身体だけが残る。
午前零時。 駆け降りる気持ちの階段に名残りの靴を落したとて、 急かし急かされる終電車。
夏山、秋山、冬山、春山。丸山、角山、大山。青山、香山。 北山、西山。横山、遠山。神山、富山、福山。竹山、栗山。 まだまだ在る、人の中にそびえる山。 こんなに山が豊富な名前の民族はいるのかしら。
ひっぱれ、ひっぱれ、ぐるぐるまわせ!! 引き潮が、しぼみかけた命を探して、手をつなぎます。 台風が、命を丸裸にして、暴風雨の洗濯機にスイッチを入れます。 救命を阻む、容赦なき自然の摂理です。
空に見惚れる。人に見惚れる。 心奪われるのに、生き返る。 不思議な矛盾。
あの人も、この人も、シルエットを帯びている。 でも、それは光が当たったからじゃない。 当たるのは、私たちの眼差しから発する心のフレア。
思考が渋滞に巻き込まれると、 わたしは、わたしを見過ごす。 大事なことから迂回する。 そして、人身事故に遭う。
人間は美しい曲線の集合体だ。 体や、心や、人生。何もかも弧を描く。 永遠の直線を描くのは、こと切れた心電図の波形のみ。
初めて目にしたハートは、鉄腕アトムの胸に埋まっていた。 鮮烈。そのカタチは、幼い私に命のありかを語りかけて来た。
冷たいハートは瞬間、シジミのなか。 温かいハートは瞬間、味噌汁の湯気。
思い出の檻のなかに監禁された潜在意識。 カギを外しに行く、新しい私の潜在意識。
歳を取ると、どんどん物を脱ぎ捨てて、濁ったハートも透けて見える透明人間。