2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧
月面シアターから3Dメガネをかけて地球を眺めると、 人を殺して流れた赤い色の層が、大気圏を越えて迫って来る。
一生涯分の財布。 そこからお金を抜き取る息子。 お爺ちゃんの妄想が洪水になって行く。 「執着」が溢れ出し、「猜疑心」が堤防を決壊させ、 さらに、勢いを増す記憶の流れ。
苦味を抜いた後の、忘れられない記憶だけがコピーされて行く。 延々、同じシールを大切に貼り続ける、おばあちゃん。 それは、帰りをいつも待ちわびていた家族の肖像だった。
どこを切っても、金太郎。 どこに行っても、金太郎。 どれだけ歳を取っても、金太郎。貼り付いた性格で未来さえ見えて来る。
私のかたわれ、無口なピーナッツの君。 いざという時に鼓動する、もう一つの私の心。
「おっ!来たか。」 そう言って、「トン!」と包丁で真っ二つ。 スイカの赤い地平線に湧く、 歓迎されることの途轍もない幸せ。
ひとりぼっちじゃなかった事が、いつか分る、温かい心の親布団。
雲が湧くように、言葉もまた、永遠と生まれて消える。 夕焼け雲のように、安堵する言葉で染まるのは、いつの日のことか。
足の引っ張り合いをする一言居士の最たる集団が、 時に、養鶏場の騒々しい鶏に見えてしまう。
弁慶の泣き所になんど傷を食らおうと、案外その足でしぶとく歩いている。
ちち、はは、目を伏せてしまうよ。 悔しいほどバカ野郎で、ごめん。
本の中で自由に飛び回る、作者の感性シナプス。 虫かごと網を持った少年のように、活字を掴まえに行く。
私たちは、太陽光線の輝く糸に釣られ、戸外に飛び出す魚。
怒った顔は、その人の心に一番近い、素直な顔の所作なのだと思う。
今夜こそ私を寝かしつけ、脳のメンテナンス工事。 立ち上がるまで、しどろもどろ、旧型コンピューター。 ニュートロンを探す旅に出るかたわら、 静かにジグソーパズルを始める神経回路。
雨の日は、玄関にいくつも咲いていた長靴。 その頃のように、いま街のアスファルトは、雨を楽しむ足でいっぱい。
満員電車のドアが閉まると、一斉に塔婆が立ち始めた。 自分に密着するものすべてを葬って、 頭の中とそれだけが電波の風でカタカタ揺れる。
呑気でいたら、君の本当が見えて来た。
仕事へ急ぐ道すがら、アゲハ蝶に出くわした。 心に挟まったその栞が、遠い夏の記憶を開けた。
イライラ、カリカリ。苛立つフライパンで揺すられ、音を立てている感情。 スッキリ、ホカホカ。お風呂場で湯通しされて、鮮やかな色に戻った感情。
過ぎた日が愛おしくなるような世界へ放流したい、稚児、子ども達。
心の耐震構造で大事なものは、「反省」してカタチを変えられる、クッション材です。
強風に誘われ、ムササビ飛行したら架線に停まり、電車を止めてしまった布団。
ちょっと我慢する。うんと我慢する。 ちょっと迷惑をかける。うんと迷惑をかける。 みんな、みんな、ちょっとだけにしておけば、 ちょっとずつ世界が違う色調になって行く。
世界を緑にする雨も涙も、じきに降って来るだろう。 「めげないバカ」と圧縮させてしまった心にも雨が沁み、 つまらない枠がふやけ、素に戻されるのだとしたら、 ただ、ただ、ひたむきに、雨音に洗われよう。
わたしは、子どもの頃から、永遠のおじいちゃん、おばあちゃんを探している。 縁側で、小さな身の丈を温かく埋めてくれる、うんちく。宝物になって行く時間。 それを求めて止まない寂しさがある。
顔を青空に向け、目を閉じて、「ひまわり」になる筈だった。 けれど、「ガシャ!」と、トースターに入れられて、 焦げる無防備な食パンとなってしまった。
こころとカラダが、納得のいく眠りでぎっしり詰まった子どもの時間。 大人になると安堵の布団は薄くなり、明日が大きな顔を見せて邪魔をする。 なのに、明日がすこしでも味方してくれるよう、眠るしかないのだ。
いつか、月面のように、すべてが止まってしまった静寂にも陽は射す。 いまは、雨が降り止まず、風が吹き荒れ、怒涛の波立つ時間にゆすられても、生きて行く。